北本団地でのプロジェクトが始まります。

埼玉県の真ん中あたりにある北本市。暮らしの隣に緑の残るこのまちに、北本団地はあります。もうすぐ築50年を迎える歴史ある団地ですが、昔栄えた商店街はシャッターだらけ、ちょっと寂しい状況です。日本中で起こっている、ありふれた、でも答えを見つけるのが難しい暮らしの問題が、ここ北本団地でも起こっています。人口が減っていくのに比例して、当然のように増えていく空き家、空き部屋。埼玉県北本市にある北本団地も、全国の団地と似たような状況で課題を抱えています。

だけどちょっと待って、それって課題ってだけじゃなく、新しい、面白いことができる可能性かも?北本団地でのプロジェクトは、地元北本出身の私たち「暮らしの編集室」が、そんな北本団地をもう一度考え、一緒に楽しんでいくために、様々な試みを行うプロジェクトです。 
(北本市さん、UR都市機構さんとの具体的な取り組みについてはこちらをご覧ください)

北本市ってこんなところ
改めてご紹介すると、埼玉県北本市は埼玉の真ん中あたりにある、典型的な郊外のベッドタウンです。埼玉の人でも、知らない人の方が多いかもしれない、お世辞にも有名とはいえないまちで、地元の人に「北本ってどんなところ?」と聞くとほとんどが「何にも無いよ」と答えてしまうような、大きな特徴のないまちともいえます。

暮らしの編集室のチームメンバーは、ほとんどが地元北本市出身。上記のような特徴は実際に北本に暮らし育ってきた中で、身にしみて感じているのですが、何も無いと思っていたまちを、改めて調べなおし、歩き、人に会い、話を聞き、まちを編集することで、何も無いまちだからこその贅沢、面白さ、暮らしやすさなどを発見する活動をしてきました。

市役所芝生広場で開催した「みどりといち」
市内の雑木林を会場に行われるマーケット「森めぐり」

例えば、北本には息を呑むような「大自然」はありません。なので、絶景を味わいに来る観光客も、シーズンごとに多くの人がレジャーを楽しみに来る定番スポットもありません。ですが、暮らしの隣には、いつでも触れられるいわば「中自然」とでもいうべきものが溢れています。

家の隣に農家さんの畑があることで、いつでも朝採りの新鮮な野菜を直売所で買うことができるし、ちょっと疲れた時には、自転車で10分も走ればNPOの方々によって長年手入れされてきた雑木林の中、ゆっくり一人の時間を過ごすことが出来ます。スペシャルな観光地ではないかもしれませんが、毎日を過ごす暮らしの場所としては、かなり良い感じなのです。

市内に点在する雑木林では子供たちは自由に遊びます
農家さんの協力のもと、農業体験の企画なども頻繁に行われています

今あるものの中から面白いもの、楽しいこと、すごい人などを探し出し、面白がる視点を共有することで、まちを編集して楽しみ方を発見してきた「暮らしの編集室」ですが、地元出身だけあり、今回の舞台、北本団地との関わりも深いです。

北本団地の昔と今と、これからと

北本市が市として生まれた1971年、時を同じくして北本団地は生まれました。来年2021年でちょうど50歳を迎えます。時代に寄り添い、多くの人の暮らしの舞台となってきた北本団地ですが、近年は入居率が下がり住民の高齢化が問題となってきています。

光が気持ちいい北本団地
キレイな紅葉。大きく育った植栽は季節ごとに色々な表情を見せてくれます。

「暮らしの編集室」のメンバーの中には、今まさに北本団地に住んでいるメンバーもいれば、かつて北本団地に住んで少年時代を過ごしたメンバーもおり、それぞれが団地との関わりを持っています。

かつてこの場所に住んでいた私は、子供の頃、毎日のように商店街で駄菓子を買い、公園に遊びに行っていました。私だけでなく、同世代の子供達は皆同じような記憶を持っていることでしょう。そんな「団地で暮らす人のために生まれた商店街」の恩恵を受けて暮らした私たちの世代は遥か昔、現在の北本団地商店街は、その役割を終えたかのように静かなシャッター通りとなってしまっています。

現在の北本団地商店街。シャッターが目立つ。営業している店舗は数える程に。

しかし、今シャッターだらけで何も無いということは、同時に、見方を変えると、これから「新しい何かを始めることが出来る場所」なのだとも言えます。少なくとも私たち「暮らしの編集室」にとっては、北本団地商店街は、こんな風になったら面白いだろうな、と様々な可能性を模索することができる、最高の余白でもあるのです。駄菓子を買う遊びの舞台だった北本団地商店街が、大人になった今、再び遊びに行ける場所になったら。考えるだけで、どんなに楽しいだろうかワクワクします。

そして、人口が減ってきているとはいえ、団地には今も多くの人が暮らしています。まだまだこの商店街が担える役割は多くあるはずです。

今まで「団地で暮らす人”だけ”」を対象としていた商店街が「団地の外に暮らす人、かつて暮らしていたけれど出てしまった人、何か新しいことをやりたいと思っている人」など、より多くの人に開かれていくことで、関わる全ての人にとって、今よりもっとずっと魅力的な場所になっていくでしょう。私たちはそう考えています。 (暮らしの編集室 江澤勇介)

プロジェクトの進捗については、こちらのWEBサイトでご報告させて頂きます。お楽しみに。